おわら風の盆

Natsuko Yamazaki

おわらを楽しんでいただくために

毎年9月1日から3日かけて行われる富山県八尾町のおわら風の盆

この期間、おわらの町は別世界になります。町のぼんぼりがともり、各町内そろいの着物を着て胡弓や、三味線、哀愁漂う歌に合わせて、それぞれの町を練り歩きます。編み笠をかぶり顔を見せないのもこの祭りの特徴です。中でも諏訪町は、石畳の坂が続く通りで趣があります。おわら風の盆は、歌、小説、漫画にも描かれ、全国からたくさんの人が訪れます。

私は以前、八尾町からの依頼で、祭りのリポートをしたことがあります。それは、祭りの美しさを伝えるためではなく、観光客が増えてきたため、八尾に来た観光客が困ってしまうところをリポートするという仕事でした。八尾町の人は、この祭りを本当に大切にしているので、祭りの間、踊ることに集中していました。この祭りは八尾の人たちのための祭りですが、歌のヒットでたくさんの人が訪れるようになり、観光客のことも考える必要が出たのです。

私は祭りに向かうため、富山駅からカメラマンと一緒に電車に乗り込みました。富山駅が長蛇の列で、駅も普段の富山では考えられないくらいたくさんの人で混雑していました。今は、臨時列車もたくさん出ていますが、当時は、カメラのアンテナが壊れてしまうくらいものすごい人でした。幸いカメラマンはほかにもいたので、カメラを交換し、八尾の取材を続けることができました。

八尾の会場へ向かう途中、坂道は一歩ずつゆっくり進みました。段差など、歩きにくいところはないか、お手洗い、ごみの状態などリポートしながら私たちは街を歩きました。あれから数十年たち、八尾町には、おわらをみに、さらにたくさんのお客さんが訪れるようになりました。以前より快適にご覧いただけるよう、八尾の皆さんも頑張っていらっしゃいます。また、外国の方向けのホームページも開設されています。

おわらのあとは、町民のための祭り

おわらの時期は込み合うので、私は8月の終わりに開催されていた前夜祭に行っていましたが、コロナ後、前夜祭はなくなり、本祭だけとなりました。

9月3日、終電の時間となり、祭りが終わりを迎えた後、八尾の町がどうなっているか、ご存じですか?深夜の八尾に行ってみました。

時間は午前2時。八尾の町は祭りの後で人は少ないのですが、熱気が残っているのを感じました。町の所々で、三味線や胡弓の音色が響き、地元の人だけのしっとりとした祭りの時間です。参加している踊り子の数は減りますが、静かな街に美しい音色が響き渡り、町を練り歩きます。この時間は、踊り子たちは編み笠をかぶらずに踊っていました。子供のころから踊りを習い、遠く県外で暮らす家族もこの祭りのために戻ってくると聞きます。八尾の人たちにとって大切な祭りで、その精神は、踊り子の美しく伸びた指先からも感じることができます。富山が誇る本当に美しい祭りです。

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